志賀直哉を読む




「死神」


東作は三度のメシよりも賭け事が好きというような男。女房と娘がいたが、この悪癖のせいで身が持てなかった。
不思議とできない男にはできる女房がくっつくもので、女房のおれんは東作に内証で貯金をしていた。
しかし娘が嫁ぐことになり、他に蓄えがなかったから、この貯金の存在を夫に打ち明けた。
打ち明けてから1カ月ほど経つが、東作はその後、心を入れかえたのか賭け事をしなくなった。
だから“大事な娘の嫁入支度だ、決して間違ひはない”と話す東作に、
嫁入り道具の明細書といっしょに、いままで貯金していた金を渡して買物を任せたのだが…。

それから3日後。彼は無一物になって帰ってきた。
「帰るなり、お前に顔色が悪いといはれた時には俺の背後に死神が立ってゐるのではないかと実はビクリとした。尤も死神といふものは誰の眼にも死神と見えるものではないらしい。…」
彼は死神に付きまとわれたというのだ。……

東作の悪癖をさらりと書いているが、嫁入りする娘の親として、無一文になるということがどれだけ一大事なことか、その辺りにリアリティがないように思えた。

登場人物
東作
おれん
お滝
                      (2007.3.31/菅井ジエラ)

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