P・G・ウッドハウスを読む



「ジーヴスと歌また歌(Jeeves and the Song of Songs)」
(1929)


ある爽やかな日の朝、バーティーが浴室で『サニーボーイ』を熱唱しているところに、ジーヴスがやってきた。
「グロソップ様でございます」
バーティーは、タッピー・グロソップには、少し前にドローンズで嫌な目に遭わされていた。
そのタッピーがバーティーに何の用事があるのだ。
バーティーは浴室を出て居間に行くと、タッピーは指一本で『サニーボーイ』を弾いているところだった。
「なあ、バーティー、ちょっと重要な問題があってお前に会いたかったんだ」
聞くと、ある女性と婚約したという。ただし、“実質上”とのこと。
「で、実質上ってのはどういう意味なんだ?」
タッピーの話では、ちょっとした問題があるらしい。“婚約者”であるコーラ・ベリンジャーはプラクティカル・ジョークが大嫌いな女性で、もし、タッピーがプラクティカル・ジョーカーなら、もう彼と口を聞かないという。彼女はドローンズでの一件を耳にしたらしく、事の真相を確かめたいと言っているというのだ。
「それで俺がお前に頼みたいのは、できるかぎり早い機会を捕まえてコーラを脇に連れ出して、その話にまるきり真実はないっていうふうに全面的に否定してもらいたいってことなんだ」
何とも虫のよい話だが、そこは紳士のウースター家。
「ああ、わかった。……いつ会えばいいんだ?」
「…俺が全部段どってある。今日あの人をここに軽い昼食をいただきに連れてくるからな」
「なんと!」

“ドローンズ”の仕返しに、一度はタッピーをぎゃふんと言わしてやりたいと思いながらも、こうして恋のキューピッド役になったバーティー。しかし、毎度のごとく、事はそう簡単には運んではくれない。
タッピーとコーラのマッチメイクの舞台が、牧師のビーフィー・ビンガムがやっているオッドフェローズ会館での娯楽ショーに移ると、違った意味で俄然やる気を見せるバーティーだったが…。

いつも完璧なはずの策が、一度は失敗に終わってしまったと思いきや、すかさず“次の手”で万事うまく収めるジーヴスの手腕。彼の適応能力にはいつも驚かされる。

★所収本
・森村たまき訳/国書刊行会『でかした、ジーヴス』(ジーヴスと歌また歌)

                      (2006.9.22/菅井ジエラ)

 

 

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