『素敵なステッキの話』横溝正史



雑誌社で編集者として働いている本田は、ある日叔父からステッキをもらう。彼はそのステッキをいたく気に入り、それからというもの、散歩などに出かける際は決まって持って出るほどだった。
ある日、本田は仕事で気むずかしいと言われている小説家Aを訪問しなければならなくなる。内気で人に会うのが苦手な彼は恐る恐るAを訪れるが、結果は惨憺たるもので、失敗に終わってしまうのだった。彼はAの家を逃げるように飛び出し、ほっと胸をなで下ろしたが、それも束の間、忘れ物をしたのに気づく。それは叔父から貰ったあのステッキだった。しかし、Aが恐いので今更取りに戻ることはできない。ステッキも惜しかったが、それ以上にAが恐かったのだ。
その時本田は、この後にステッキとの不思議な巡り合わせがあろうとは夢にも思っていなかった…。
おどろおどろしい殺人が次々と起き、横溝正史得意の推理ショーが展開されるというストーリーではなく、軽いタッチのおしゃれな内容に仕上がっている。読書の息抜きによい小品だ。
                      (2004.10.6/菅井ジエラ)

※光文社文庫『「探偵趣味」傑作選』所収

 

 

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