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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1965年
ピーター・S・ビーグル「死の舞踏」


舞台は英国のロンドン。ジョージ王が君臨していた時代の話。
バッキンガム宮殿のほど近くに大きな屋敷を構えるフローラ・ネヴィル夫人は、すでに夫を亡くしていたが、自身の人生も残り少なくなってきた最近では、パーティを催すことが唯一の楽しみになっていた。特にここ数年間はパーティや舞踏会を催すことに多くの時間を費やし、それには英国の最高の貴族たち、ときには王様までも出席するほどだった。
しかし、パーティを重ねるうちに、それすらつまらないものになり始める。楽団、著名人、奇術師、曲芸師、魔術師などさまざまな人を雇い、贅を尽くした最高のパーティを催せば催すほど、夫人はますます退屈さを覚えていくのだった。
「わたしのパーティは、ますますみんなを楽しませているようですね。わたし自身を除いては」
ある夏の午後、自分の屋敷に友人たちを呼び寄せて衝撃的な発表をする。
「次の舞踏会にはいかなる人であっても、たとえわたしであっても、決して飽きることのないと思うお客様を招待することにしました。みなさん、次のわたしの舞踏会の主賓は、死神、その人です!」
死神に招待状を書く夫人。そして自分の髪結い師の子供が病気で、この先希望がないことに気付くや、その髪結い師を呼び出し、招待状を持たせた。
その後、髪結い師が小さな白い封筒をもって夫人の元にふたたび現れる。封筒を開く夫人。中にはカードが一枚入っており、次のような文字がしるされていた。
「<ネヴィル夫人の舞踏会に喜んで出席させていただきます。死神>」
それから2週間後の舞踏会当日。出席者は恐怖心と好奇心を胸に、夫人の家に集まりはじめる。果たして死神はやってくるのか?
怪奇小説ではあるが、おどろおどろしいだけでなく、その中に文学的香気が漂う。臨場感の持たせ方も卓越しており、物語の結末には悲しみさえ覚える。
(鏡明訳/番町書房『世界怪奇ミステリ傑作選』他、講談社文庫『ファンタジーへの誘い』所収)
                      (2003.9.20/B)

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