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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1931年(Best Short Short)
オリヴァー・ラ・ファージ「幽霊屋敷」


友人であるスーザン・ヘイルが、不幸にも彼女の家に盗みに入った強盗犯の犠牲になったという知らせを聞いたジョージ・ウォータースンは、急いで海に出たが、悪天候のため、愛船「ルーシー号」は見るも無惨なほどばらばらになってしまう。彼はふらつきながら立ち上がり回りを見た時にはじめて、スーザンが住む、「幽霊屋敷」と呼ばれているヘイル家の屋敷の浜に、自分が打ち上げられたということを知る。
それにしても、この寒さは尋常ではない。とにかく寒いので、これは「幽霊屋敷」に行く他はない。そう思ったジョージは、通いなれた道を通ってヘイル家に向かう。その間、彼は自分の心臓がたいそう遅く鼓動しているように思えた。
ジョージは玄関までやってくるとドアをノックしたが応答がない。もう一度ノックしても誰の応答もないため、彼は把手を回して家の中に入っていった。すると居間の中央にヘイル夫人が揺り椅子に座っているのが見えた。
「突然お邪魔したことをお許しください、ヘイル夫人」
彼がヘイル夫人にそう話すと、彼女はジョージに向かって変なことを言い出した。
「いいんですよ、ジョージ。あなたがなんだかわかっていたら、なかにはいっていただいたところですわ。さあ、お掛けなさい」…
大変短い作品でありながら、とてもよく作り込まれていると、ただただ感心してしまった。
(永井淳訳/創元推理文庫『ミニ・ミステリ傑作選』所収)
                           (2004.12.19/B)

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