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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1935年
トマス・ウルフ「ブルックリンを知ってるのは幽霊だけ」


“おれ”が電車を待っていると、酔っぱらった大男が小男に向かって、道を聞いているのを目にした。
「18番街と67丁目との交差点にはどう行けばいいんだね?」
ブルックリンの町についてはあまり詳しくないので分からないと、小男が答えると、大男は今度は“おれ”に向かって聞いてきた。“おれ”は「知ってる」と答えて道を教えてやっていると、ちょうど電車が来たので「おれと一緒に来な」と言って、その大男と電車に乗り込んだ。
電車の中で、そこへ何をしに行くのか聞いてみると、ただその辺りを見に行くだけだと言う。こいつ、“おれ”をばかにしてやがると思ったが、大男は至ってまじめに「いろんなところに行ってみたい」と言って、ポケットから地図を取り出した。そしてこの間はイーリイ・ベースンに行ったとか、レッド・フックに行ったとか言い出すのだった。
その後、大男は変なことをいろいろ尋ねてくる。そして最後に突然「お前さんは泳げるのかね?」と聞いてきた。彼はほんのちょっとだけしか泳げないという。「おれは、さかなみたいに泳げる」と答えてやると、大男は訳の分からないことを言いだした…。
作者は『天使よ、故郷を見よ』で知られるトマス・ウルフ。ファンタジー的要素のある不思議な味の作品だ。
(橋本福夫訳/早川書房『ニューヨーカー短篇集I』所収)
                           (2004.2.7/B)

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