幻想・怪奇小説を読む



 『死霊の恋』 ゴーチエ 岩波文庫


ドイツ後期ロマン派の作家ホフマンに影響を受けて小説を書き始めたフランスの作家ゴーチエ(1811-72)の怪奇物語。なお『死霊の恋・ボンベイ夜話』の中には五話収録されている。どの作品も不可思議な魅力溢れる作品ばかり。
さて『死霊の恋』の内容はと言うと、ずっと世間を知らずに神学校で成長した青年僧侶が悪霊にとりつかれる話である。カトリックのフランスならではというか、キリスト教徒ならではの教訓的怪奇物語である。
主人公の青年は、司祭に昇格する除品式の行われた日、未亡人風の悩ましい美女クラリモンドを目撃する。青年はそれまで、神学校での厳格な修行生活を送ってきたせいでその美女を目撃した瞬間、人目惚れし魂を奪われてしまう。要するに、何としてでも再びあの美女に会って自分のモノにしたいと思ってしまうのだった。
そして、困難なことだと考えていた本人の予想とは裏腹に、青年は美女クラリモンドをいとも簡単にモノにしてしまうのだが・・・
青年がモニにする前に不可解な出来事が起こっていた。
青年と美女クラリモンドが結ばれる前、美女クラリモンドは一度死んでいたのだ。
司祭となった青年は、司祭という立場と美女クラリモンドへの想いに揺らぎながら、幻想の中で美女クラリモンドとの恋愛を謳歌しようとするのだが、育て親ともいうべき司祭セラピオン師がやってきて・・・

                           (2003.12.3/A)

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