P・G・ウッドハウスを読む



「彼女の幸運(A Bit of Luck for Mabel)」(1925)


『人生だなんて妙なものだなア』と言って、浮かない顔をしているアクリッジ(ユークリッジ)。
私はどうしたのか聞いてみると、
まかり間違えば、今頃、シンガポールで途轍もない身分になっていたかもしれないという。
不思議に思った私は、なぜシンガポールの人がアクリッジをチヤホヤするのか聞くと、
彼は『金のためにさ』と答えた。
『金?』
『そうさ。メーベルの親父さんというのがシンガポールの大した金持ちなんだ』
『メーベルって誰だい?』
『まだ話さなかったかしら?』
恋仲になったメーベルと順調に交際を続けていたが、あるものがきっかけで破談になったらしい。
それがなければ、今頃おれは…というわけだ。

『…ほんのちょっとしたものでも我々を躓かせる邪魔物となる場合があるものだ』
今回、その邪魔物となったのが…。
『おれの場合ではシルクハットだった』
シルクハット?
シルクハットがアクリッジとメーベルとの仲をどのように邪魔したのか。
その話の顛末は…。

いつもゴーイング・マイ・ウェイのユークリッジが周りを巻き込んで起こす恋物語。
こんな生活をしながら彼が破綻しないのは、ひたすら彼の取り巻き連中の寛容さゆえか…。

★所収本
・梶原信一郎訳/「新青年」大正15年夏期増刊号、同訳/博文館<新青年叢書>『どもり綺譚』、
 同訳・森下雨村編/<探偵傑作叢書第五十編>「怪奇探偵 探偵名玉集」(彼女の幸運)
・森村たまき訳/国書刊行会『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』(メイベルの小さな幸運)
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『ユークリッジの商売道』(メイベル危機一髪)

                      (2007.10.24/菅井ジエラ)

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