P・G・ウッドハウスを読む



「ユークリッジ口座を開く(Ukridge Starts a Bank Account)」
(1967)


ぼく(コーキー)がピカデリーをぶらついている時、旧友のユークリッジにそっくりの人物を見かけた。
その男はどう見ても裕福そうなので、最初は彼であるわけがないと思っていたが、それはユークリッジ本人だった。
いつも彼は金を無心しに僕のところにやってくるのだが、今日は何を間違ったか僕に気付くと、どこかで豪勢なランチでもおごってやろうといいだす。
僕は気持ち悪いほど羽振りのよい彼に、一体どうしたのかと聞いてみると、儲かる仕事にありつけたのだという。

先日、ユークリッジはついこの間までジュリア伯母の執事をしていたスタウトという男とパブで出くわした。住所を教えてやると、ユークリッジの家にある男が訪ねてきた。
その男はスタウトの兄で名前はパーシー。私設馬券屋をしていたが、客の借金のカタでアンティーク家具をたくさん手に入れたという。しかし、うまく売りさばくには“弁の立つ”人間がいる。そこで弟のホレースに相談したら、ユークリッジを推薦されたというのだった。
ユークリッジは週給5ポンド・部屋と賄い付きという条件を、週給10ポンドまではね上げて承諾すると、田舎に出て、道ばたに店を出した。
だが、商売の調子はあまり芳しくない。それは彼がアンティーク家具についての専門知識を皆目持ち合わせていなかったからだった。
そこで彼はジュリア伯母に協力を仰ごうと思った。アンティーク家具に目がない伯母の家には、それらに関する本もたくさんあるのだ。
そのうちの2、3冊でも借りて読めば“販売技術の欠陥”は充分に補うことができる。そう考え、彼は伯母の家に向かったのだが…。
ジーヴスとは正反対で、こちらの執事はいただけない。
当のユークリッジは例によっていつもの調子。伯母もできの悪い甥っ子を持つと大変だ。

★所収本
・浅倉久志訳/「EQ」1982年9月号<No.29>(ユークリッジ口座を開く)

                      (2005.5.10/菅井ジエラ)

 

 

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