志賀直哉を読む




「沓掛にて─芥川君のこと」


志賀直哉が芥川龍之介の死を知ったのは昭和2年7月25日の朝、信州篠ノ井から沓掛に向かう途中だった。
志賀直哉は芥川に7度会ったことがあるというが、ここではそんな芥川との思い出を述懐している。
7年ほど前に浅草で瀧井孝作と一緒のところを見たのが最初。それからいろいろな場所で二人は出会っているが、
文学好きの人にとって嬉しいのが、彼らの生活が如実に窺えることだ。
志賀直哉が子供の三輪車を買って自宅に戻ると、芥川と瀧井が家で待っていて、
そこに里見とんと直木三十五がやってくるというシーンがあるが、
当時はもちろん普通でも、今聞くと、何かフィクションのように思えてしまう。すごい世界だ。

さて、志賀直哉は最後に芥川の死について、こう述べている。
“それは思ひがけない事には違ひないが、四年前武郎さんの自殺を聞いた時とは余程異った気持だった。
乃木大将の時も、武郎さんの時も、一番先きに来た感情は腹立たしさだったが、
芥川君の場合では何故か「仕方ない事だった」と云ふやうな気持がした。”

登場人物
芥川龍之介
瀧井孝作
菊池寛
小穴隆一
南部修太郎
久保田万太郎 ほか
                      (2006.4.3/菅井ジエラ)

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