ユーモア小説を読む




香住春作「見合令嬢」


佐竹都留子は明朗快活な典型的な美人で、年齢は23歳。大富豪の佐竹鉱山王が遺した一人娘だ。巨万の富に囲まれてはいたが、幼い頃に母を亡くし、父にも死なれてからは天涯孤独の身。父の遺言で、彼女の後見人を務めている弁護士の宮西次郎が唯一の相談相手だった。
彼女の天性の美貌と莫大な財産が手伝い、縁談の申込みが後を絶たない。彼女も結婚に対しては満更ではなく、何度も見合いを繰り返した。しかし、いつも決まって良い返事はしない。その数30回以上。彼女はいつしか「見合令嬢」と呼ばれるようになっていた。
おまけに、その「見合令嬢」に良からぬ評判が立つようになった。というのも、彼女は見合いの席で、いつも妙な癖を働くからだった。
そして、今日は彼女の何十回目の見合いの日。今回の相手は宮西の従弟で法医学士の住吉博士だった…。
作者である香住春作は香住春吾の別名。出典の「新青年」のタイトルに冠した“ユーモア・コント”という言葉通り、爽やかな内容に仕上がっている。
(「新青年」昭和23年3月号所収)
                      (2006.8.26/B)

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