P・G・ウッドハウスを読む



「ブランディングズ城を襲う無法の嵐
(The Crime Wave at Blandings)」
(1936)


ある夏の日、いつものように至高の美しさに包まれたブランディングズ城一帯に、一転して不穏な空気が流れた。
何か良からぬ事件が起こりそうな予感が…。

今回の物語の鍵となるのは以下のふたり。
エムズワース伯爵の孫ジョージに、かつてエムズワース伯爵の個人秘書を務めていた男、ルパート・バクスターだ。
片時も空気銃を離さないジョージは誰も手に負えない子どもで、前の日も空気銃で窓ガラスを割ったばかり。日に日に悪ガキ度が増していくジョージに、レイディ・コンスタンスは困っていた。
そこに白羽の矢が立ったのがルパート・バクスター。彼は伯爵の個人秘書を辞した後、一時期あるアメリカ人の下で働いていたが、そのアメリカ人が母国に帰るのを機に仕事を辞め、現在英国中をバイクで旅しているところだった。レイディ・コンスタンスはジョージに教育を施せるのはルパート・バクスター以外にいないと考え、ジョージの家庭教師として招くことにした。
その話に驚いたのがジョージとエムズワース伯爵のふたり。ジョージは、せっかくの夏休みに家庭教師なんて付けられたりしたら楽しく遊ぶことすらできない。一方の伯爵も、ブランディングズ城の“悪夢の主犯”と形容できるルパート・バクスターが、また城内を闊歩する様は二度と見たくない。断然固辞すべき話だったが、妹のレイディ・コンスタンスには到底逆らえない。ジョージも伯爵もだまって聞く以外どうしようもなかった。
それが、ある事件をきっかけに、文字通り“無法の嵐”が吹き荒れはじめた。

「知ってるの、何があったか? ジョージはミスター・バクスターを撃ったのよ!」

この銃撃騒動が、伯爵の姪ジェインの婚約話や執事ビーチの辞表騒ぎと絡み合いドタバタ劇に。
次々に襲ってくる危機的状況を伯爵はどうかいくぐるのか。
この作品ではエムズワース伯爵の城主としての頼もしさが感じられる。それは威厳と呼ぶにふさわしいものだ。

★所収本
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『エムズワース卿の受難録』(ブランディングズ城を襲う無法の嵐)
                      (2007.3.24/菅井ジエラ)

 

 

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