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ミステリを読む




トム・デミジョン
『黒いアリス』


美しいブロンドの髪をポニーテールにした青い目の少女アリス。11歳の彼女は、夏休みが終わると7年生を飛び越して8年生に進級するほどの優等生だった。
この夏も家庭教師のゴドウィン先生のもとで退屈な日々を送っていたが、その退屈さを一掃するある事件が起こった。
彼女の祖父が遺産を娘夫婦にではなく孫のアリスに遺したことが発端となり、アリスは犯罪に巻き込まれたのだ。
「あたしはユーカイされるところなんだ!ぜったいだわ!…とってもスリル!」
誘拐犯が要求した身代金の額は100万ドル。この誘拐事件を首謀する意外な犯人とは?

KKKや公民権運動など、当時の米国の世相を色濃く反映させながら進むストーリー。誘拐犯の手口はそうした世相を皮肉っていて大変興味深い。
著者のトム・デミジョンはトマス・M・ディッシュとジョン・スラデックの共同ペンネームだが、すれっからしの作家と言われる彼ららしい 着想点だ。
では、この誘拐犯の手口が現実的なものかどうかというと、訳者あとがきに“不可能だとはいえない”ようなニュアンスで書かれているが、個人的な見解ではやはり無理があるとしか言いようがない。
推理小説として「?」が付く点も少なくないが、あくまでそれはそれ。ストーリーについつい引き込まれ、楽しく読むことができた。超異色推理として読んでみて損はない作品だ。
(各務三郎訳/角川文庫)
                           (2007.4.27/菅井ジエラ)

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