ユーモア小説を読む




中野実『お嬢さん探偵』


由利三岐子が父の旧友である東(あずま)を頼って訪ねてきたのは、彼が所長を務める私立探偵事務所。
なんでも女探偵になりたいのだという。
東は探偵稼業は“探偵小説のようにおもしろいものでもなく”“勇気と忍耐が必要”な仕事だと諭すのだが、三岐子の意志は固い。
彼女にはどうしても探偵になりたい訳があるという。
それは一言でいえば、女性の擁護だそうだ。“結婚詐欺に引っかかった女性”“夫に貞操を疑われて挙げ句の果てに自殺した新妻”“夫が殺人強盗犯だったことを知り泣く妻”…。
こうした同性の悲劇を一つでも少なくし、同時に同性に警告を与えることを使命として探偵業に従事したいという。
東は三岐子の“ダメなら女性の敵として訴える”という意気込みに半ば気押されて、彼女を雇うことにした。

三岐子が初めて請け負った仕事は、男爵令嬢の結婚相手の素行調査。
彼女が去年の春まで通っていた学校でクラスメイトだった円子からもらった話で、彼女の友達である和子の結婚相手候補として挙がっている男性の調査だった。
彼女は、この仕事は女性権の確立という点でも立派なものだと考え、調査を開始することにした。
そして、この調査を続けるうちに、連鎖的につながる事件と騒動。
彼女は、ある時は女中、またある時はダンサー、さらに男装もして調査をし、女性の地位向上に努めるのだが…。

お嬢さん探偵三岐子の活躍を描く、さわやか青春物語。
(春陽文庫)
                      (2007.10.18/菅井ジエラ)

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