P・G・ウッドハウスを読む



『ウースター家の掟(The Code of the Woosters)』
(1938)


友人のガッシー・フィンク=ノトルとサー・ワトキン・バセットCBEの一人娘マデラインとの婚礼の前祝いを主催した日の翌朝、“頭に大釘を叩き込まれている”ほどの二日酔いに見舞われていたバーティー・ウースターの元に、一件の電話があった。
その電話を取り次いだジーヴスに聞いてみると、それはダリア叔母さんからのもの。彼女を慕っているバーティーはどうせなら直接訪ねてやろうと、叔母さんの家へと向かった。
そして叔母の家を訪れたバーティーが彼女に言われたのは、ひとつお願いを聞いてほしいという一言。
それは“誰にでもできる、とっても簡単なこと”だというのだ。

「…ブロンプトン・ロードにある骨董屋に行って、…そこでウシ型クリーマーをせせら笑ってもらいたい」
「何に何をするんだって?」
「そこに行くとね、十八世紀のウシ型クリーマーがあって今日の午後トムがそいつを買うことになってるの」
ダリア叔母さんの夫であるトム叔父さんは古銀器を集めていて、それらに相当な額をつぎ込んでいる。
叔母さんは、ウシ型クリーマーなる代物が思っているほど高価なものではないということをトム叔父さんに分からせて、彼の“無駄使い”を少しでも食い止めたいと思っているのだ。
とりあえずは、とバーティーはダリア叔母さんの言われるまま、問題の店を訪れたのだが、そこには意外な人物がいて…。

『僕がここでお話しするのは、ガッシー・フィンク=ノトル、マデライン・バセット、パパバセット御大、スティッフィー・ビング、H・P・(「スティンカー」)ピンカー牧師、十八世紀製のウシ型クリーマー、そして小さな茶色の革装の手帖に関わる、陰惨な事件の顛末である』
バーティーが物語のはじめにそう語るように、たくさんの人物が起こすさまざまな事件が複雑に入り混じりながら物語が進行していくのだが、ストーリー展開が緻密に計算されていて、大変面白い。
また、以前にバーティーやジーヴスに起こった数々のエピソードがちりばめられていて、ウッドハウス作品の愛読者は「そんなこともあった」と思わずほくそ笑んでしまう。
もちろん、この作品だけでも楽しく読むことができるが、他の作品もまとめて読むと、さらに一層楽しむことができるだろう。


★所収本
・森村たまき訳/国書刊行会『ウースター家の掟』

                      (2006.11.12/菅井ジエラ)

 

 

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