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A・B・コックス『プリーストリー氏の問題』


犯罪学が趣味のパット・ドイルは、婚約者のドーラとともに彼女の友人であるネズビット夫妻を訪ねる。そこで、ガイ・ネズビットも犯罪学を趣味としていると知るや、パットはガイとお互いの犯罪学に対する私見を述べ始めた。
そして二人が行き着いた結論。それは“犯行時点から犯人を観察下に置いて”、直接的に犯人の心理を探究する術はないものかということだった。
「実験してみたらいいということだよ。心理学的実験だ。…もちろん、本物の殺人じゃない。ただ、その男が人殺しをしたと思い込むようお膳立てするんだよ。…」
策を練るパットとガイ。しばらくして、「そうだっ!」パットが椅子の背を握り拳で叩く。
「うってつけの男がいるんだ!…プリーストリーという男なんだが……」
“キャベツだ、カブだ、ペポカボチャのカタツムリ野郎だ!”と評されるほど、活気のない人生を送っているプリーストリーを実験台にして行われるエセ殺人事件。渦中のプリーストリーは、まさかこれが茶番だとはまったく思っていない。町の警察は消えた死体と消えた犯人を追って大捜索。ついには州警察を巻き込んで繰り広げられる。
突然現れた美女と逃げるハメになったプリーストリーの目の前に、次々と現れる難題。
ダメ男と思いきや、この男、意外にやります。
(小林晋訳/晶文社)
                      (2005.6.27/菅井ジエラ)

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