『妹のこと』井出説太郎(第三次新思潮・第1巻第3号)



 一組の若い男女を描いた話。
三週間前に女の妹である雅子が、長く患っていた病のために帰らぬ人になった。
母親にさえ弱いところを見せなかった雅子。
だが、女は一人で死んでいく苦しみを必死に絶えている雅子を見ていられなかったという。
そして、女は告白する。
「雅子は貴方を恋していたの……きっと私が恋して居たよりも一層強く……。」
「こんな所で泣いてどうするのです。」と女をたしなめるように言う男。
「…もうすつかり気が弱くなって駄目なのですもの…」と言う女。
「…死ぬ迄ね、きつと愛して下さいね」と言いながらすがる女に、かける言葉を見つけられないまま、男は彼女を抱きしめるのだった。
「妹が姉の彼氏を想う」という設定は他の小説でも良く見かけるが、この時代はこういったことが実際にも多くあったのだろうと思う。
                     (2003.9.7/菅井ジエラ)



井出説太郎(?-?)
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※“悦太郎さま”より、井出説太郎はアララギ派の歌人、土屋文明の若き日のペンネームだとご指摘いただきました。ありがとうございました(2004.9.9)。

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