「良き店主」サムラット・ウパディアイ



より良い生活を求めて“自由の国”アメリカにやってくる移民たち。夢をつかむのは決して易しいことではなく、また見えない(見える?)差別と戦わなければならないことも多々あるようだが、アメリカ文学界にも移民作家は数多くいる。
「良き店主」の著者であるサムラット・ウパディアイは、ネパール出身の作家。この作品は2001年の『アメリカ短編小説傑作選』に選ばれているが、この本にはウパディアイの他、ドミニカ共和国出身のジュノ・ディアズや中国出身のハ・ジン、インド出身のジュンパ・ラヒリ、南アフリカ出身のシーラ・コーラーなど、実に7人の移民作家の作品が収められている。
「良き店主」は、突然会社から解雇通告を受けた男の話。
転職活動を行うが、なかなかうまくいかない。一流の金融会社で働いていたというプライドも彼の転職を邪魔していた。ある日、いつものようにお偉方たちに屈辱的な挨拶回りをした後、公園のベンチで一服していると、若い女性が声をかけてきて…。
典型的なアメリカン・ショート・ストーリーといった印象。移民作家が活躍できる土壌があるのは、アメリカ文学界の良いところだ。
                      (2006.5.7/菅井ジエラ)


『アメリカ短編小説傑作選2001』(DHC)収録作品
「隠者物語」リック・バス
「太陽と月と星と」ジュノ・ディアズ
「ミセス・ダッタは手紙を書く」チットラ・ディヴァカルニー
「カンザスの夏」スティーヴン・ドビンズ
「曲芸師」ネイサン・イングランダー
「ピアノ調律師」ティム・ガトロー
「標なき心の湖」メリッサ・ハーディ
「五時二十二分」ジョージ・ハーラー
「島々」A・ヘモン
「最高のガールフレンドみたいな存在」パム・ヒューストン
「シャオナの秘密」ハ・ジン
「最初に申し込んでくれた人と結婚しなさい」ハイディ・ジュラヴィッツ
「キングサイズの人生」ヘスター・カプラン
「アフリカンズ」シーラ・コーラー
「病気の通訳」ジュンパ・ラヒリ
「不動産」ローリー・ムーア
「セイヴ・ザ・リーパー」アリス・マンロー
「世界の果てにはバンチグラスが生えている」アニー・プルー
「ダコイット」ジェームズ・スペンサー
「良き店主」サムラット・ウパディアイ

 

 

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