P・G・ウッドハウスを読む



『サンキュー、ジーヴス(Thank You, Jeeves)』(1934)


今回の一連の話は、バーティーがバンジョレレ─バンジョーとウクレレの間の子といわれる楽器─に夢中になっていたのが、そもそもの始まりだ。
つまり、バーティーはバンジョレレにさえ夢中になっていなければ、住んでいるアパートを追われることもなかったし、ジーヴスが辞表を提出して出ていくこともなかった。しかし、どちらも現実のこととなったのだ。
ロンドンの街を憂鬱な気持ちで歩いていたバーティーは、旧友のチャッフィーと偶然出くわした。後から考えれば、それは良い出会いだったのか、それとも悪い出会いだったのか…。
チャッフィーはチャフネル・レジスの領主で第5代チャフネル男爵、つまりバーティーが住めそうなコテージなど1ダースでも2ダースでも所有している身分だった。
バーティーはこれは良かったと、翌朝、早速チャフネル・レジスの村へ。一方でジーヴスもその村へ赴いた(バーティーからジーヴスが出ていったことを知ったチャッフィーがジーヴスを雇ったのだった)。

しかし、バーティーには毎度のごとく嫌な再会が待っている。現地に着くと、まもなくアメリカの大富豪であるJ・ウォッシュバーン・ストーカーとその娘のポーリーンに出会ったのだ。さらに、その再会はサー・ロデリック・グロソップという最高のおまけ付きだった。
チャッフィーはポーリーンにぞっこんだった。そしてポーリーンも彼に思いを寄せていた。だから結婚には何の障害もないように思えたが、ポーリーンの偏屈おやじであるパパストーカーが相手となると、そう簡単には話が進まない。おまけに、以前にニューヨークであったある事実がふたりの結婚を複雑にしていたのだった。

チャッフィーとポーリーンの結婚はどうなるのか。そして、バーティーとジーヴスの関係はどうなってしまうのか。
今回はバーティーの男気を強く感じた。
そしてバーティーとジーヴスの信頼関係は相当に強固なものだと改めて思った。


★所収本
・森村たまき訳/国書刊行会『サンキュー、ジーヴス』
                      (2006.12.11/菅井ジエラ)

 

 

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