P・G・ウッドハウスを読む



「上の部屋の男(The Man Upstairs)」(1910)


作曲家のアネット・ブルームは、アパートの一室でワルツの作曲に没頭していたが、上の階で「バン!バン!」と何度も床を鳴らす音に耐えかねて、一言言いにいこうと決意。何のつもりで床を蹴っているのかを問いただそうと、上の階に住む男の部屋に行きドアを叩こうとした。その時、中から「どうぞ」という声が。 部屋の中にいたのは、アラン・ビヴァリーという名の絵描きだった。
“あなたが同じところを何度も弾いているので、床を鳴らしたくなった”といった言い訳をする彼に、「一小節ずつ作曲をしている」と話すと、アランは讃嘆の表情を浮かべながら「作曲ができるのですか」と感心する。その後、彼と話をしていくうちにアネットは、楽譜は自費出版でなくてはなかなか印刷してもらえず、印刷してもらえたとしても少しも売れないという自分の立場から、全然絵が売れない不遇な画家である彼に共感を覚え、2人は次第に仲良くなっていく。
その後、アネットはまた楽譜を出版したが、今度も自費出版。彼女はまた全然売れないのじゃないかと心配していると、驚くことに、今回は出版社も予想できないほど売れに売れる。お金も入り、大満足の彼女。しかし、アランの方は何作品かを画商に預けてはいるものの、売れる気配さえない。そんな折、アラン宛の電話をアネットが取り…。
ウッドハウスが1910年に発表した作品。意外な展開と爽やかなラストシーンが、読んでいて清涼感を与えてくれる。

★所収本
・小野寺健編訳/岩波文庫『20世紀イギリス短篇選(上)』(上の部屋の男)
・井上一夫訳/早川書房「ミステリマガジン」1961年10月号<64号>(階上の男)

                      (2004.9.6/菅井ジエラ)

 

 

「P・G・ウッドハウスを読む」ページトップヘ
「文芸誌ムセイオン」トップヘ

All Rights Reserved Copyright (C) 2004-2016,MUSEION.

 

inserted by FC2 system