P・G・ウッドハウスを読む



「監獄志願兵(Jeeves and the Unbidden Guest)」(1916)


ニューヨークで素晴らしい朝を迎えていたウースターとジーヴスの元に、モルバーンと名乗る女性が若い男を連れて訪ねてくる。ウースターは一瞬、彼らが誰か心当たりがなかったが、アガサ伯母さんの知り合いだと気付くや、渋々会うことにした。
モルバーン夫人がここに来た目的、それは社会批評家という肩書きをもつ彼女が、仕事でアメリカの監獄を取材している間、息子のウィルモットを預かっていてほしいということだった。ウィルモットは年の頃なら22〜23歳。背がひょろっとした、一見おとなしそうな青年。ウースターは結局彼女に押し切られ、息子を預かってやることになった。
“おとなしい子だから、全然手がかからない”という彼女の言葉とは裏腹に、ウィルコットは今までの母親の呪縛からとき離れたかのように、羽をのばして毎晩遅くまで飲み歩いている。何も起こらなければ良いが…とウースターは心配していたが、数日経ってその不安が的中。酒に酔っぱらって、巡査を殴ってしまい、監獄に入れられてしまった。このままだとウースターの監督不行届になってしまい、彼女やアガサ伯母さんに何を言われるか分からない。ウースターはジーヴスに相談するが、当のジーヴスは「どこに行ったか、彼女に聞かれても、ボストン旅行に出かけたと言っておけばいい」などと言って、あまり身を入れて考えてくれない。そんな中、モルバーン夫人が予定より早く帰ってきてしまい…。
国書刊行会からウッドハウスコレクションとして出版予定の『それゆけ、ジーヴス(Carry on, Jeeves)』にも収められている一編。毎度のことながら、ジーヴスがここまで先を読んで手を打つことができるなんて、これなら誰であっても彼に太刀打ちできそうにない。

★所収本
・宮園義郎訳/「新青年」昭和13年2月号(監獄志願兵)
・井上一夫訳/集英社『20世紀の文学 世界文学全集 37』(招かれざる客)
・村上啓夫訳/「宝石」昭和35年8月号(ジーヴズと招かれざる客)
・森村たまき訳/国書刊行会『それゆけ、ジーヴス』(ジーヴスと招かれざる客)

                      (2005.3.20/菅井ジエラ)

 

 

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