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ミステリを読む




G・D・H・コール
『ブルクリン家の惨事』


演劇界の大御所ヴァーナン・ブルクリン卿の70歳の誕生パーティが行われた次の日の朝。卿の甥であるジョン・プリンセプが自室で死んでいるのが発見される。
現場に残された証拠品から、彼の従兄弟であるジョージ・ブルクリンが容疑者として挙げられるが、何と彼も庭で死体となってほどなく発見されたのだった。しかも奇怪なことに、こちらの現場に残された証拠品はプリンセプが犯人であることを示している。さて、離れた場所でお互いを殺し合うことが果たしてできるものか?答えはノーである。
では、一体誰が仕組んだ犯罪なのか。どうやらヴァーナン卿の誕生パーティの席上で公表された遺言状の中味が大きく関係しているといえそうだ。
ロンドン警視庁警部のブレイキイは、上司であるウィルスン警視と連携を取りながら捜査を進めるが、しばらくして卿の弟であるウォルタ・ブルクリンの名を容疑者として挙げた。なぜなら、第一にウォルタは金に困っており、二人が死ぬことでブルクリン卿が亡くなった時に莫大な遺産を継ぐことができるということ、第二にウォルタが犯人であると裏付けられるものが事件の現場に残されていたからだ。
そのためウォルタは拘留の身となるが、一方でウォルタの義理の娘であるジョアンは義父の無罪を信じ、青年ロバートと組んで独自に調査をするのだった。
事件の始まりの部分はなかなか面白く、どんどん読むことができた。しかし、素人探偵の探偵術や頭脳明晰を謳うウィルスン警視の推理などといった点では、(欲を言えば)もう一ひねりあればとも思った。ただ、全体としては十分に楽しめたといえる。
(加島祥造訳/新潮文庫)
                           (2005.8/22/菅井ジエラ)

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