P・G・ウッドハウスを読む



「猫は猫なり(Cats will be Cats)」(1932)


「釣師のいこい」酒場の広間で、その日話題に上っていたのは、マリナー家のウェブスターという猫のこと。少し前にも話題になった猫だ。ウェブスターは絵描きのランスロット、つまりマリナー氏のいとこであるエドワードの息子が、聖職を務める彼の叔父のセオドアから預かっている猫で、生まれてからずっと司祭長館で過ごしていた。そのため、ウェブスターはその一挙手一投足が洗練されていたのだが、ランスロットの元にやってきてから、ある偶然の出来事がきっかけで性格が変わってしまったのだった。「釣師のいこい」酒場の常連たちは、その後のウェブスターがどうなっているのかを知りたがった。そこで、マリナー氏は後日談を語り始めた。

叔父セオドアのアフリカ赴任がきっかけでウェブスターの面倒をみるようになったランスロットは、初めのうちこそ奇妙な体験をしたものの、その頃にはすでに平穏な生活に戻っていた。しかし、それも一通の電報で変わってしまう。
“セオドア叔父さんが健康上の理由で監督職を辞して、アフリカから帰ってくる!”
その電報を手にするまで、そんな事態になることなど毛頭なかった。それが突然現実に引き戻される。
“叔父さんは今のウェブスターの姿を知らない!”
ランスロットはセオドアを大変当てにしていた。というのも、絵描きとして独り立ちできてはいるものの、フィアンセのグラディスと結婚するためにはどうしても金銭的な援助が必要となる。つまり、セオドア叔父さんに助けてもらわなければならないわけだ。
…「このウェブスターのなれの果てを見たらセオドア叔父さん何ていうかなあ。……」

ランスロットはこの危機をどう切り抜けるのか。そして、ウェブスターはどうなる?
「ウェブスターの物語」の続編。他のシリーズに勝るとも劣らない強烈な母娘が登場し、たじたじになる叔父セオドア。だが、弱々しいと思いきや、最後の最後に一本筋の通った振る舞いができるのは、やはりマリナー家の血だ。

★所収本
・森岡栄訳/南雲堂〈双書・20世紀の珠玉〉『笑うサム・他/ブランコに乗る中年男/マリナーの夜』(猫は猫なり)
・黒豹介訳/解放社『恋の禁煙─マリナー氏は語る─』、同訳/東成社『恋の禁煙』(猫と僧正)

                      (2006.12.25/菅井ジエラ)

 

 

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