P・G・ウッドハウスを読む



「従僕と怪盗(Aunt Agatha Takes the Count)」(1922)


従僕のジーブスを伴い、叔母のアガサから逃れるようにフランスのロヴィーユにやってきたウースター。彼が近代的で美しい令嬢、アライン・ヘミングウェーと出会ったのはパリからの汽車の中だった。急速に懇意になった二人は、街に着いてからも午餐を一緒に取ることを約束。そして午餐の席上、ウースターは彼女に兄で牧師のシドニーを紹介される。
午餐後、ウースターがジーブスから聞いた言葉は、束の間の幸せを一瞬に地獄の底に突き落とすようなものだった。恐れを抱いているアガサ叔母がこのホテルに来るというのだ。叔母はウースターがホノリア・グロサップという名の女性との婚約を破ったのに腹を立てているのだった。ウースターはそのことを考えると、また逃げるしかないと思ったが、それでは好意を寄せるアラインとも別れなければならない。これが何とも辛かった。思案に暮れるウースター。その時、ドアがノックされる音が聞こえた。
ウースターは叔母の怒っている顔を想像しながら、恐る恐るドアを開けてみた。しかし、そこに立っていたのはアガサ叔母ではなく、アラインだったのだ。兄を連れて現れた彼女だったが、どうやらウースターにお願いがあるらしい。話を聞いてみると、シドニーがカジノで大損をしたので、お金を貸してくれないかとのことだった。彼女は真珠の首飾りが入ったケースを差し出し、これを抵当にお金を貸してくれと懇願したが、気のいいウースターは抵当なんていらないと突っぱねて、お金だけ貸してあげますという。しかし、それでは申し訳ないという彼女。こういうことはちゃんとしておかないとと、彼女は首飾りの入ったケースを置き、変わりにお金と首飾りを預けた証明となる受け取りを手に、兄と一緒に出ていった。
しかし、二人が出ていった後、すぐにジーブスがとんでもないことを言い出した。ジーブス曰く、彼らは有名な二人組の怪盗だというのだ。首尾よく金を巻き上げ、預けた宝石類をなくされたと言っては、受け取りを証拠にさらに金を要求するという王道の手段だというのだ。気になったウースターは首飾りのケースを開けてみると、そこには何も入っていない。ウースターはすっかりだまされてしまったわけだ。そこでジーブスの出番。ウースターに助け船を出すことになって…。
ウッドハウスのいわゆる“ジーヴスもの”のひとつ。

★所収本
・黒豹介訳/東成社『天晴れジーブス』(従僕と怪盗)

                      (2005.2.1/菅井ジエラ)

=追記=
『比類なきジーヴス』(森村たまき訳/国書刊行会)の中に「アガサ伯母、胸のうちを語る(Aunt Agatha Speaks Her Mind)」「真珠の涙(Pearls Mean Tears)」という2章があるが、それらは上記「従僕と怪盗」を2つの章に分けて書き直したもの。
                      (2005.3.5/菅井ジエラ)

 

 

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