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明治文学を読む
●明治文学について
今日、本は私たちの日常生活において身近な存在になっているが、その昔、本を一般市民にも普及すべく文芸運動を繰り広げたのが、明治期の文芸作家たちだった。
明治時代のほとんどの作品が旧かなづかいで書かれているため、文字離れが進んでいる私たちにとっては、読むのがどうしても億劫になりがちだが、読んでみると今日の作品にはない面白さがある。
ここでは「明治期の作品=教科書に載っている作品」というイメージを払拭し、肩の力を抜いて紹介していきたい。
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【明治文学作品】
※緑色で記した作品は順次レビューアップ予定。
黒色で記したものはその年に発表されたその他の作品、著名な作品。
※作品名や引用部分の旧字・旧仮名づかいは、一部改めて記しています。
※リストにあるeBOOKリンクから作品を読むことができます。
明治元年(1868年)
「立憲政体略」(加藤弘之) eBOOK
「窮理図解」(福沢諭吉) eBOOK
明治2年(1869年)
「鉛筆紀聞」(栗本鋤雲)
「暁窓追録」(栗本鋤雲)
「世界国尽」(福沢諭吉) eBOOK
明治3年(1870年)
「海人の刈藻」(大田垣蓮月=蓮月尼) eBOOK
「真政大意」(加藤弘之)
「万国航海西洋道中膝栗毛」(仮名垣魯文) eBOOK
「西国立志篇」(中村正直=敬宇訳/スマイルズ著)
明治4年(1871年)
「牛店雑談安愚楽鍋」(仮名垣魯文) eBOOK(初編) eBOOK(2編上下) eBOOK(3編上下)
「菊模様皿山奇談」(三遊亭円朝) eBOOK(上) eBOOK(下) eBOOK2
明治5年(1872年)
「胡瓜遣」(仮名垣魯文)
「自由之理」(中村正直訳/ミル著) eBOOK
「学問ノススメ」(福沢諭吉) eBOOK
「かたわ娘」(福沢諭吉)
明治6年(1873年)
「国体新論」(加藤弘之)
「近世紀聞」(染崎延房)
明治7年(1874年)
「義烈回天百首」(染崎延房編)
「耶蘇一代弁妄記」(田島象二)
「柳橋新誌」(成島柳北) eBOOK(初編) eBOOK(二編)
「京猫一斑」(成島柳北)
「知説」(西周)
「致知啓蒙」(西周)
「百一新論」(西周) eBOOK(巻之上) eBOOK(巻之下)
「東京新繁盛記」(服部撫松)
明治8年(1875年)
「怪化百物語」(高畠藍泉=転々堂) eBOOK(上) eBOOK(下)
「美妙学説」(西周)
「文明論之概略」(福沢諭吉) eBOOK
明治9年(1876年)
「埋木廼花」(高崎正風編)
「一大奇書書林之庫」(田島象二)
明治10年(1877年)
「新説八十日間世界一周」(川島忠之助訳/ヴェルヌ著) eBOOK
「日本開化小史」(田口卯吉)
明治11年(1878年)
「花柳春話」(織田純一郎訳/リットン著)
「塩原多助一代記」(三遊亭円朝) eBOOK
「西洋品行論」(中村正直=敬宇訳/スマイルズ著) eBOOK
明治12年(1879年)
「水錦隅田曙」(伊東専三)
「民権田舎歌」(植木枝盛) eBOOK
「其名も高橋毒婦の小伝東京奇聞」(岡本起泉)
「島田一郎梅雨日記」(岡本起泉)
「高橋阿伝夜刃譚」(仮名垣魯文)
「巷説児手柏」(高畠藍泉)
「民情一新」(福沢諭吉)
明治13年(1880年)
「開巻驚奇竜動(ロンドン)鬼談」(井上勤訳/リットン著)
「民権数へ歌」(植木枝盛)
「南の海血潮の曙」(坂崎紫瀾)
「春風情話」(橘顕三=坪内逍遥意訳/スコット著)
「民権演義情海波瀾」(戸田欽堂)
明治14年(1881年)
「怪化娘出世指南」(池田喜多治=箆棒痴人)
「川上行義復讐新話」(岡本起泉)
「嶋鵆月白波」(河竹黙阿弥)
「天衣紛上野初花」(河竹黙阿弥)
「怪化狂詩撰」(島田主善=夢春)
「航西日乗」(成島柳北)
「東京粋書」(野崎左文)
「恋仇花盛街夕暮」(番亭楽山)
「忘貝」(村山松根)
明治15年(1882年)
「新体詩抄」(井上哲次郎・外山正一・矢田部良吉)
「春霞筑波曙」(宇田川文海)
「雁信壺の碑」(宇田川文海)
「地獄極楽一周記 : 文明開化」(大久保夢遊)
「東洋自由の曙」(坂崎紫瀾)
「岡山紀聞筆の命毛」(高畠藍泉)
「仏国革命起源西洋血潮小暴風」(百華園主人=桜田百衛)
「ハムレット」(矢田部良吉訳)
明治16年(1883年)
「開明奇談写真廼仇討」(伊東専三) eBOOK
「花春時相政」(伊東専三) eBOOK
「橋供養梵字文覚」(河竹新七)
「勤王為経民権為緯新編大和錦」(小室案外堂)
「法燈将滅高野暁」(小室案外堂)
「天下無双人傑海南第一伝奇汗血千里駒」(坂崎紫瀾)
「仏国革命修羅の衢」(坂崎紫瀾)
「阿国民造自由廼錦袍」(桜田百衛) eBOOK
「閻魔大王判決録 : 新奇妙談」(高瀬紫峰)
「維氏美学」(中江兆民訳/ウージェヌ・ヴェロン原著)
「天賦人権論」(馬場辰猪)
「経国美談」(矢野龍渓) eBOOK
「小夜千鳥浪の音信」(三品藺渓=柳条亭華彦)
明治17年(1884年)
「惨風悲雨世路日記」(菊亭香水) eBOOK
「興亜綺談夢恋々」(小室案外堂) eBOOK
「自由艶舌女文章」(小室案外堂) eBOOK
「南山皇旗の魁」(坂崎紫瀾)
「怪談牡丹燈籠」(三遊亭円朝) eBOOK
「黄金の花籠」(須藤南翠)
「政党余談 春鶯囀」(関直彦訳/ディズレイリ著)
「漢字破」(外山正一)
「羅馬字会を起すの趣意」(外山正一)
「泰西活劇春窓綺話」(服部撫松=坪内逍遥意訳/スコット原作)
「第二世夢想兵衛胡蝶物語」(服部撫松)
「虚無党実伝記 鬼啾啾」(宮崎夢柳訳/ステプニャック原作)
明治18年(1885年)
「破邪新論」(井上円了)
「江嶋土産滑稽貝屏風」(尾崎紅葉)
「諷世嘲俗 繋思談」(藤田茂吉・尾崎庸夫合訳/リットン著)
「余波の水茎」(乞食井月)
「春色日本魂」(須藤南翠)
「一読三歎当世書生気質」(坪内逍遙) eBOOK
「小説神髄」(坪内逍遙) eBOOK
「佳人之奇遇」(東海散士)
「日本婦人論」(福沢諭吉)
明治19年(1886年)
「当世商人気質」(饗庭篁村) eBOOK
「人の噂」(饗庭篁村) eBOOK
「政治小説雪中梅」(末広重恭=末広鉄腸) eBOOK
「二十三年未来記」(末広重恭=末広鉄腸) eBOOK
「雨窓漫筆緑蓑談」(須藤南翠) eBOOK
「一頻一笑新粧乃佳人」(須藤南翠)
「内地雑居未来の夢」(春のや主人=坪内逍遥) eBOOK
「将来之日本」(徳富蘇峰)
「演劇改良論私考」(外山正一) eBOOK
「二十三年国会未来記」(服部撫松)
「男女交際論」(福沢諭吉)
「周遊雑記」(矢野文雄=矢野龍渓)
明治20年(1887年)
「東京未来繁昌記」(夢遊居土=大久保常吉) eBOOK
「娘博士」(尾崎紅葉)
「筑紫潟松千代咲」(川尻宝岑)
「中国怪談集」(小泉八雲)
「慨世史談断蓬奇縁」(小宮山天香訳/チヤートリアン原作) eBOOK
「冒険企業聯島大王」(小宮山天香)
「守銭奴の肚」(嵯峨の屋お室)
「ひとよぎり」(嵯峨の屋お室)
「南洋時事」(志賀重昂)
「政治小説花間鶯」(末広鉄腸) eBOOK
「痴人の夢」(須藤南翠)
「新日本之青年」(徳富蘇峰)
「三酔人経綸問答」(中江兆民)
「善悪の岐」(中島湘烟)
「屑屋の籠」(西村天囚)
「代議政談月雪花」(久松義典)
「南溟偉蹟」(久松義典)
「女子参政蜃中楼」(広津柳浪)
「済民偉業録」(藤田茂吉)
「浮雲」(二葉亭四迷) eBOOK
「武蔵野」(山田美妙) eBOOK
明治21年(1888年)
「新体詩歌自由詞林」(植木枝盛)
「美人の俤」(大橋乙羽)
「新開場梅田神垣」(川尻宝岑)
「御垣の下草」(税所敦子) eBOOK(上) eBOOK(下)
「無味気」(嵯峨の屋お室)
「東洋之佳人」(柴四郎=東海散士)
「殺人犯」(須藤南翠)
「闇中政治家」(原抱一庵)
「もしや草紙」(福地桜痴)
「あひびき」(二葉亭四迷訳/ツルゲーネフ原作) eBOOK
「めぐりあひ」(二葉亭四迷訳/ツルゲーネフ原作)
「炭坑秘事」(紅勺園主人=森田思軒訳/ヴェルヌ原作)
「夏木立」(山田美妙)
明治22年(1889年)
「良夜」(饗庭篁村) eBOOK
「百美人」(淡島寒月)
「旅画師」(江見水蔭)
「二人比丘尼色懺悔」(尾崎紅葉) eBOOK
「Yes and No」(尾崎紅葉)
「恋」(奥村柾兮=大東楼愚人)
「楚囚之詩」(北村透谷) eBOOK
「勇み肌」(木村曙)
「婦女の鑑」(木村曙)
「無惨」(黒岩涙香) eBOOK
「あやしやな」(幸田露伴)
「奇男児」(幸田露伴)
「露団々」(幸田露伴) eBOOK
「風流仏」(幸田露伴) eBOOK
「悪魔」(堺利彦)
「くされ玉子」(嵯峨の屋お室)
「野末の菊」(嵯峨の屋お室)
「初恋」(嵯峨の屋お室)
「流転」(嵯峨の屋お室)
「とりかへばや」(条野採菊)
「三都の花」(武田仰天子)
「条約改正」(塚原渋柿園)
「細君」(坪内逍遙)
「埃及近世史」(柴四郎=東海散士) eBOOK
「山間の名花」(中島湘烟)
「海王丸」(半井桃水)
「くされ縁」(半井桃水)
「残菊」(広津柳浪)
「水と石」(前田香雪)
「於母影」(森鴎外等訳) eBOOK
「胡蝶」(山田美妙)
明治23年(1890年)
「伽羅枕」(尾崎紅葉)
「西印度諸島の二年間」(小泉八雲)
「縁外縁(改題/対髑髏)」(幸田露伴)
「ひげ男」(幸田露伴)
「一口剣」(幸田露伴)
「廻瀾」(高瀬文淵)
「め組の喧嘩」(竹柴其水)
「水郷の夢」(徳富蘆花)
「日本絵画ノ未来」(外山正一)
「九十九の嫗」(中西梅花)
「桧木笠」(中村花痩)
「業平竹」(半井桃水)
「門出小草」(野口寧斎)
「二人花婿」(堀成之=烟亭紫山人)
「自惚娘」(槇野半酔)
「帰省」(宮崎湖処子)
「小説家」(村井弦斎) eBOOK(上之巻) eBOOK(下之巻)
「舞姫」(森鴎外) eBOOK
「うたかたの記」(森鴎外) eBOOK
「浮城物語」(矢野龍渓) eBOOK
明治24年(1891年)
「こがね丸」(厳谷小波)
「二人女房」(尾崎紅葉) eBOOK
「蓬莱曲」(北村透谷) eBOOK
「いさなとり(小説勇魚捕)」(幸田露伴) eBOOK(前編) eBOOK(後編)
「艶魔伝(風流艶魔伝)」(幸田露伴) eBOOK
「五重塔」(幸田露伴) eBOOK
「辻浄瑠璃」(幸田露伴)
「寝耳鉄砲」(幸田露伴)
「風流悟」(幸田露伴)
「大通世界」(幸堂得知)
「浦島次郎蓬莱噺」(幸堂得知)
「酔骨録」(小杉天外)
「油地獄」(斎藤緑雨) eBOOK
「かくれんぼ」(斎藤緑雨) eBOOK
「夢現境」(嵯峨の屋お室)
「新日本史」(竹越三叉)
「瓜畑」(古桐軒主人=田山花袋)
「離れ鴦」(中村花痩)
「胡砂吹く風」(半井桃水)
「月珠」(省庵居士=原抱一庵訳/コリンズ原作)
「春日局」(福地桜痴)
「幕府衰亡論」(福地桜痴)
「江戸桜」(前田曙山)
「真善美日本人」(三宅雪嶺)
「空家」(宮崎湖処子) eBOOK
「小猫」(村井弦斎) eBOOK
「三日月」(村上浪六)
「文づかひ」(森鴎外) eBOOK
「盗賊秘事」(山田美妙)
明治25年(1892年)
「三人妻」(尾崎紅葉) eBOOK
「塩原多助一代記」(河竹新七)
「怪異談牡丹燈籠」(河竹新七)
「鶯宿梅」(菊池幽芳)
「厭世詩家と女性」(北村透谷) eBOOK
「我牢獄」(北村透谷) eBOOK
「浴泉記」(小金井喜美子訳/レールモントフ原作)
「当世志士伝」(小杉天外)
「肥えた旦那」(堺利彦)
「没理想の語義を弁ず」(坪内逍遙)
「うもれ木」(樋口一葉)
「たま襷」(樋口一葉)
「闇桜」(樋口一葉)
「別れ霜」(樋口一葉)
「幕府衰亡論」(福地源一郎=福地桜痴)
「奴の小万」(村上浪六)
「即興詩人」(森鴎外訳) eBOOK
明治26年(1893年)
「隣の女」(尾崎紅葉) eBOOK
「人生に相渉るとは何の謂いぞ」(北村透谷) eBOOK
「内部生命論」(北村透谷) eBOOK
「枕頭山水」(幸田露伴)
「風流微塵蔵」(幸田露伴)
「悪太郎」(堺利彦)
「継母根性」(堺利彦)
「はだか男」(堺利彦)
「滑稽長屋」(痩々亭骨皮道人)
「マコウレー」(竹越三叉)
「茨木阿滝紛白糸」(土屋南翠=須藤南翠)
「若葉」(高瀬文淵)
「小詩人」(田山花袋)
「桂川」(戸川残花)
「情死を弔ふ歌」(戸川残花)
「碓氷の紅葉(改題/両毛の秋)」(徳富蘆花)
「近世欧米歴史之片影」(徳富蘆花)
「百合の花」(徳富蘆花)
「警文学者」(人見一太郎)
「国民的大問題」(人見一太郎)
「春興鏡獅子」(福地桜痴)
「芭蕉雑談」(正岡子規)
明治27年(1894年)
「義血侠血」(泉鏡花) eBOOK
「文学者となる法」(内田魯庵)
「三人やもめ」(北田薄氷)
「知られぬ日本の面影」(小泉八雲)
「久知那志の花」(小出粲)
「夢幻」(小宮山天香)
「仇娘呉服屋騒動」(彩霞園柳香) eBOOK
「隔屏物語」(堺利彦)
「湖上之美人」(塩井雨江訳/スコット原作)
「日本風景論」(志賀重昴)
「瀧口入道」(高山樗牛) eBOOK
「桐一葉」(坪内逍遙) eBOOK
「社会主義一班」(長澤別天)
「俄長者」(中村花痩)
「曇天」(原抱一庵)
「明月」(原抱一庵)
「大つごもり」(樋口一葉) eBOOK
「畜生塚」(広津柳浪)
「男やもめ」(前田曙山)
「亡国の音」(与謝野鉄幹)
明治28年(1895年)
「外科室」(泉鏡花) eBOOK
「夜行巡査」(泉鏡花) eBOOK
「国語のため」(上田万年)
「余は如何にして基督信徒となりし乎」(内村鑑三)
「電光石火」(江見水蔭)
「女房殺し」(江見水蔭)
「青葡萄」(尾崎紅葉)
「菊水」(長田秋濤)
「書記官」(川上眉山) eBOOK
「改良若殿」(小杉天外)
「連俳小史」(佐々醒雪)
「医学修業」(田沢稲舟)
「しろばら」(田沢稲舟)
「十三夜」(樋口一葉) eBOOK
「たけくらべ」(樋口一葉) eBOOK
「にごりえ」(樋口一葉) eBOOK
「ゆく雲」(樋口一葉)
「黒蜥蜴」(広津柳浪)
「亀さん」(広津柳浪)
「黒蜥蜴」(広津柳浪)
「変目伝」(広津柳浪)
「人柱築島由来」(藤野古白)
「蝗うり」(前田曙山)
「壮士の犯罪」(本吉欠伸)
明治29年(1896年)
「照葉狂言」(泉鏡花) eBOOK
「紫宸殿」(岡本綺堂)
「亀甲鶴」(小栗風葉)
「多情多恨」(尾崎紅葉) eBOOK
「断末魔」(桐生悠々)
「六人の死骸」(黒岩涙香) eBOOK
「心」(小泉八雲)
「闇のうつつ」(後藤宙外)
「三人冗語」(森鴎外・幸田露伴・斎藤緑雨)
「破れ羽織」(堺枯川=利彦)
「美文韻文花紅葉」(塩井雨江・大町桂月・武島羽衣)
「局松島」(武田仰天子)
「五大堂」(田沢稲舟)
「峯の残月」(田沢稲舟・山田美妙)
「牧の方」(坪内逍遥)
「藪柑子」(徳田秋声)
「Seen and Unseen」(野口米次郎)
「ふたすぢ道」(長谷川胡恋=長谷川如是閑)
「うらむらさき」(樋口一葉)
「この子」(樋口一葉)
「わかれ道」(樋口一葉)
「われから」(樋口一葉) eBOOK
「浅瀬の波」(広津柳浪)
「今戸心中」(広津柳浪) eBOOK
「河内屋」(広津柳浪) eBOOK
「当世五人男」(村上浪六)
「東西南北」(与謝野鉄幹)
明治30年(1897年)
「海の秘密」(江見水蔭)
「金色夜叉」(尾崎紅葉) eBOOK
「ふところ日記」(川上眉山)
「源おぢ」(国木田独歩) eBOOK
「仏土の落ち穂」(小泉八雲)
「若菜集」(島崎藤村)
「しろあらし」(島村抱月)
「由井正雪」(塚原渋柿園)
「The Voice of the Valley」(野口米次郎)
「畜生腹」(広津柳浪)
「非国民」(広津柳浪)
「大森彦七」(福地桜痴)
「侠客春雨傘」(福地桜痴)
「うき草」(二葉亭四迷訳/ツルゲーネフ原作)
「怨めしや」(三宅青軒)
「そめちがへ」(森鴎外) eBOOK
明治31年(1898年)
「くれの廿八日」(内田魯庵)
「武蔵野」(国木田独歩) eBOOK
「忘れえぬ人々」(国木田独歩) eBOOK
「二日物語」(幸田露伴) eBOOK
「三人片輪」(竹柴其水)
「不如帰」(徳富蘆花) eBOOK
「福翁自伝」(福沢諭吉)
「にごり水」(前田曙山)
明治32年(1899年)
「団扇太鼓」(生田葵山)
「湯島詣」(泉鏡花) eBOOK
「己が罪」(菊池幽芳)
「狼少年」(黒田湖山訳)
「一国の首都」(幸田露伴) eBOOK
「扇頭小景」(小泉烏水)
「蛇いちご」(小杉天外)
「腐肉団」(後藤宙外)
「半日あるき」(高浜虚子)
「ふるさと」(田山花袋)
「天地有情」(土井晩翠)
「薄衣」(永井荷風)
「骨ぬすみ」(広津柳浪)
「もつれ糸」(広津柳浪)
「女大学評論 新女大学」(福沢諭吉)
「千枚張(改題/腕くらべ)」(前田曙山)
「俳諧大要」(正岡子規)
「悪源太」(松居松葉)
明治33年(1900年)
「馬加物語」(淡島寒月)
「高野聖」(泉鏡花) eBOOK
「鉄道唱歌」(大和田建樹)
「海国冒険奇譚海底軍艦」(押川春浪)
「郊外」(国木田独歩) eBOOK
「初恋」(国木田独歩) eBOOK
「戦塵」(久留島武彦)
「太郎坊」(幸田露伴)
「はつ姿」(小杉天外) eBOOK
「雲のゆくへ」(徳田秋声)
「思出の記」(徳富蘆花)
「自然と人生」(徳富蘆花)
「武士道」(新渡戸稲造)
「聖人か盗賊か」(省庵居士=原抱一庵訳/リットン原作)
「目黒小町」(広津柳浪)
「さんど笠」(前田曙山)
「鎗一筋」(村井弦斎)
明治34年(1901年)
「註文帳」(泉鏡花) eBOOK
「破垣」(内田魯庵)
「片われ月」(金子薫園)
「無弦弓」(河井醉茗)
「女詩人」(草村北星)
「牛肉と馬鈴薯」(国木田独歩) eBOOK
「廿世紀之怪物帝国主義」(幸徳秋水)
「暗香疎影」(塩井雨江)
「ゆく春」(薄田泣菫)
「美的生活を論ず」(高山樗牛)
「人の罪」(田口掬汀)
「行く秋」(谷活東)
「桃の井橋」(谷活東)
「野の花」(田山花袋)
「暁鐘」(土井晩翠)
「難破船」(中内蝶二)
「一年有半」(中江兆民)
「無花果」(中村春雨=吉蔵)
「迦具土」(服部躬治)
「最近国家社会主義」(久松義典)
「社会小説東洋社会党」(久松義典)
「桧舞台」(前田曙山)
「嗚呼売淫国」(正岡芸陽)
「時代思想の権化」(正岡芸陽)
「婦人の側面」(正岡芸陽)
「紫美人」(松居松葉)
「夢の夢」(柳川春葉)
「みだれ髪」(与謝野晶子) eBOOK
明治35年(1902年)
「夜の人」(井上唖々)
「社会百面相」(内田魯庵) eBOOK
「浜子」(草村北星)
「酒中日記」(国木田独歩) eBOOK
「運命論者」(国木田独歩) eBOOK
「空知川の岸辺」(国木田独歩) eBOOK
「大学攻撃」(黒田湖山)
「はやり唄」(小杉天外)
「めぐる泡」(後藤宙外)
「うもれ咲」(小林蹴月)
「しらぬ火」(篠原温亭)
「旧主人」(島崎藤村) eBOOK
「新美辞学」(島村抱月)
「公孫樹下にたちて」(薄田泣菫)
「重右衛門の最後」(田山花袋) eBOOK
「侠足袋」(塚原渋柿園)
「春光」(徳田秋声)
「黒潮」(徳富蘆花)
「あらひ髪」(登張竹風)
「地獄の花」(永井荷風) eBOOK
「野心」(永井荷風)
「日本少女のアメリカ日記」(野口米次郎)
「ほし草」(橋本忠夫=橋本青雨)
「新思潮とは何ぞや」(長谷川天渓)
「雨」(広津柳浪)
「山菅」(星野天知)
「女流ハイカラー」(正岡芸陽)
「英雄主義」(正岡芸陽)
「偽善百方面」(正岡芸陽)
「病牀六尺」(正岡子規)
「紺暖簾」(山岸荷葉)
明治36年(1903年)
「悪縁」(稲岡奴之助)
「恋の短銃」(大沢天仙)
「観音岩(石巻庄右衛門)」(川上眉山)
「独絃哀歌」(蒲原有明)
「乳姉妹」(菊池幽芳) eBOOK
「こころ」(北里闌)
「一夜夫婦」(木村錦花)
「耳なし芳一」(小泉八雲)
「雁坂越」(幸田露伴)
「天うつ浪」(幸田露伴)
「魔風恋風」(小杉天外)
「紀念小著苅萱集」(齋藤弔花) eBOOK
「国家と詩人」(齋藤野の人) eBOOK
「思草」(佐佐木信綱)
「二年越」(篠原温亭)
「江戸城明渡」(高安月郊)
「新生涯」(田口掬汀)
「美文韻文霓裳微吟」(武島羽衣)
「神秘」(武林無想庵)
「桎梏」(徳田秋声)
「夢の女」(永井荷風)
「From the Eastern Sea」(野口米次郎)
「ささやき」(藤沢古雪=周次)
「理想の女学生」(正岡芸陽)
「食道楽」(村井弦斎)
「失恋境」(山岸荷葉)
明治37年(1904年)
「和蘭皿」(生田葵山)
「萩之家遺稿」(落合直文)
「銀鈴」(尾上柴舟)
「火の柱」(木下尚江) eBOOK
「良人の自白」(木下尚江)
「相思怨」(草村北星)
「怪談」(小泉八雲)
「東京の木賃宿」(幸徳秋水)
「女夫波」(田口掬汀)
「女郎蜘」(谷活東)
「露骨なる描写」(田山花袋)
「新曲浦島」(坪内逍遥)
「帰朝の記」(野口米次郎)
「妾の半生涯」(福田英子)
「天才の失恋」(正岡芸陽)
「北海熊」(行友李風)
「君死に給ふことなかれ」(与謝野晶子)
明治38年(1905年)
「あこがれ」(石川啄木)
「野菊の墓」(伊藤左千夫) eBOOK
「海潮音」(上田敏訳) eBOOK
「琵琶歌」(大倉桃郎)
「お百度詣」(大塚楠緒子)
「霰に霙」(小川未明) eBOOK
「青春」(小栗風葉)
「小野のわかれ」(小山内薫)
「水彩色」(加藤眠柳)
「春鳥集」(蒲原有明)
「露子夫人」(草村北星)
「まひる野」(窪田空穂)
「桜時雨」(高安月郊)
「伯爵夫人」(田口掬汀)
「悲劇竹村翠」(武林無想庵)
「第二軍従征日記」(田山花袋)
「団栗」(寺田寅彦)
「竜舌蘭」(寺田寅彦)
「幻影の盾」(夏目漱石) eBOOK
「倫敦塔」(夏目漱石) eBOOK
「吾輩は猫である」(夏目漱石) eBOOK
「海潮音」(長谷川時雨)
「夏花少女」(前田林外)
「人の心」(町田柳塘=楓村居士)
「泊客」(柳川春葉)
「花守」(横瀬夜雨)
「恋衣」(与謝野晶子・山川登美子・茅野雅子)
明治39年(1906年)
「孔雀船」(伊良子清白) eBOOK
「神秘的半獣主義」(岩野泡鳴)
「新浮世風呂」(海賀変哲)
「三千里」(河東碧梧桐)
「ゆく雲」(児玉花外)
「小説エハガキ帖」(小林蹴月)
「少女の煩悶」(齋藤弔花)
「肉弾」(桜井忠温)
「行火」(佐藤紅緑)
「朝飯」(島崎藤村) eBOOK
「破戒」(島崎藤村) eBOOK
「白羊宮」(薄田泣菫)
「葛城の神」(薄田泣菫)
「千鳥」(鈴木三重吉)
「その雫」(武林無想庵)
「天草一揆」(塚原渋柿園)
「新気運」(中島孤島)
「炭燒のむすめ」(長塚節)
「盲巡礼」(中村星湖)
「すひかつら」(中谷無涯)
「草枕」(夏目漱石) eBOOK
「坊つちゃん」(夏目漱石) eBOOK
「二百十日」(夏目漱石)
「其面影」(二葉亭四迷) eBOOK
「猫文士気焔録」(藤代素人)
「花妻」(前田林外)
明治40年(1907年)
「淡潮」(石丸梅外=石丸梧平)
「婦系図」(泉鏡花) eBOOK
「夜」(岡本霊華)
「鴎心録」(角田勤一郎=浩々歌客)
「塵溜(塵塚)」(川路柳虹)
「天風魔帆」(児玉花外)
「滝の音」(小林蹴月)
「湖畔の悲歌」(沢村胡夷)
「駅夫日記」(白柳秀湖)
「お三津さん」(鈴木三重吉)
「山彦」(鈴木三重吉)
「競馬」(武田仰天子)
「蒲団」(田山花袋)
「少女病」(田山花袋)
「少年行」(中村星湖)
「天狗廻状」(半井桃水)
「虞美人草」(夏目漱石) eBOOK
「縁」(野上彌生子)
「平凡」(二葉亭四迷) eBOOK
「全力の人」(堀内新泉)
「探検小説空中軍艦」(町田柳塘=楓村居士)
「南小泉村」(真山青果)
「大石内蔵助」(渡辺霞亭)
「小松嵐」(渡辺黙禅)
明治41年(1908年)
「鳥影」(石川啄木)
「隣の嫁」(伊藤左千夫) eBOOK
「春の潮」(伊藤左千夫) eBOOK
「闇の盃盤」(岩野泡鳴)
「世間師」(小栗風葉) eBOOK
「灰燼」(上司小剣)
「竹の木戸」(国木田独歩) eBOOK
「長者星」(小杉天外)
「榾」(佐藤紅緑)
「網走まで」(志賀直哉)
「荒絹」(志賀直哉)
「或る朝」(志賀直哉)
「速夫の妹」(志賀直哉)
「春」(島崎藤村) eBOOK
「痩犬」(相馬御風)
「鶏頭」(高浜虚子)
「俳諧師」(高浜虚子)
「生」(田山花袋)
「妻」(田山花袋)
「障子の落書」(藪柑子=寺田寅彦) eBOOK
「二万三千哩」(戸川秋骨)
「新世帯」(徳田秋声) eBOOK
「あめりか物語」(永井荷風)
「萩のしつく」(中島歌子)
「半生」(中村星湖)
「坑夫」(夏目漱石)
「三四郎」(夏目漱石) eBOOK
「夢十夜」(夏目漱石) eBOOK
「元禄快挙録」(福本日南)
「何処へ」(正宗白鳥)
明治42年(1909年)
「江戸か東京か」(淡島寒月)
「耽溺」(岩野泡鳴) eBOOK
「社会進化論」(小山鼎浦)
「邪宗門」(北原白秋) eBOOK
「悪戯小僧日記」(佐々木邦)
「大役小志」(志賀重昂)
「懐疑と告白」(島村抱月)
「三畳と四畳半」(高浜虚子)
「続俳諧師」(高浜虚子)
「北米の花」(田村松魚)
「田舎教師」(田山花袋) eBOOK
「狐」(永井荷風)
「ふらんす物語」(永井荷風) eBOOK(新編)
「氷の花」(中里介山)
「それから」(夏目漱石) eBOOK
「雪月花」(芳賀矢一)
「?(改題/額の男)」(長谷川如是閑)
「廃園」(三木露風) eBOOK
「ヰタ・セクスアリス」(森鴎外) eBOOK
「半日」(森鴎外) eBOOK
「金貨」(森鴎外) eBOOK
「煤煙」(森田草平) eBOOK
「女ざむらひ」(渡辺黙禅) eBOOK
明治43年(1910年)
「虻」(青木健作)
「歌行燈」(泉鏡花) eBOOK
「出雲の阿国」(伊原青々園)
「うづまき」(上田敏)
「身替座禅」(岡村柿紅)
「恭三の父」(加能作次郎) eBOOK
「路傍の花」(川路柳虹)
「松山一家」(郡虎彦)
「剃刀」(志賀直哉)
「家」(島崎藤村)
「養家」(白石実三)
「小鳥の巣」(鈴木三重吉)
「外相夫人」(田口掬汀)
「刺青」(谷崎潤一郎) eBOOK
「麒麟」(谷崎潤一郎)
「縁」(田山花袋)
「別れたる妻に送る手紙」(近松秋江) eBOOK
「NAKIWARAI」(土岐善麿)
「紅茶の後」(永井荷風)
「高野の義人」(中里介山)
「土」(長塚節)
「門」(夏目漱石) eBOOK
「万年筆」(長谷川天渓)
「収穫」(前田夕暮)
「米国野球見物」(正岡芸陽)
「青年」(森鴎外) eBOOK
「あだ花」(森しげ)
明治44年(1911年)
「修禅寺物語」(岡本綺堂) eBOOK
「薔薇と巫女」(小川未明) eBOOK
「大川端」(小山内薫)
「厄年」(加能作次郎) eBOOK
「思ひ出」(北原白秋)
「炉辺」(窪田空穂)
「濁った頭」(志賀直哉)
「千曲川のスケッチ」(島崎藤村) eBOOK
「墓穴」(白石実三)
「明智光秀」(武田仰天子)
「書斎より街頭に」(田中王堂)
「少年」(谷崎潤一郎) eBOOK
「乱調子」(田村松魚)
「あきらめ」(田村俊子)
「芸者」(田村西男)
「髪」(田山花袋)
「黴」(徳田秋声)
「スヰートホーム」(内藤千代子)
「澪」(長田幹彦)
「善の研究」(西田幾多郎)
「父親と三人の娘」(野上彌生子)
「夜の舞踏」(人見東明)
「嘘つく女」(深尾葭汀)
「泥人形」(正宗白鳥)
「樹蔭」(松本泰)
「お目出たき人」(武者小路実篤)
「雁」(森鴎外) eBOOK
明治45年(1912年)
「お絹」(青木健作)
「最近の小説家」(生田長江)
「悲しき玩具」(石川啄木) eBOOK
「魯鈍な猫」(小川未明) eBOOK
「和泉屋染物店」(木下杢太郎) eBOOK
「近代文学十講」(厨川白村)
「道成寺」(郡虎彦)
「哀花熱花」(兒玉傅八<花外>)
「下町」(後藤末雄)
「平家の人々」(高須芳次郎)
「悪魔」(谷崎潤一郎)
「誓言」(田村俊子)
「渦」(田山花袋)
「零落」(長田幹彦)
「彼岸過迄」(夏目漱石) eBOOK
「巣鴨の女」(野上臼川)
「秋の一日」(野上彌生子)
「テレジヤのかなしみ」(野上彌生子)
「毒の園」(昇曙夢訳/ソログーブ作)
「元始女性は太陽であつた」(平塚らいてう)
「春のゆめ」(福田夕咲)
「かのやうに」(森鴎外) eBOOK
「兄と妹」(守田有秋)
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●作品レビュー
「浮雲」(二葉亭四迷/明治20年)
そもそも、結婚は種の繁栄のため、家の発展のためという大義があった。
本人同士の気持ち以上に、家族や周囲の人間たちの評価が影響力をもっていた。
明治に入って鎖国が終わり、世界と競争するために国家をあげての教育制度が導入される。
教育偏重主義によって、若者という存在が現れ注目されるようになる。
勉学に励み、未来を有望視される若者。
そんな周囲の期待と世間の評価とは裏腹に、若者たちには若者ならではの悩みが数多く生まれる。
知識と現実との差。恋愛もその一つだ。
明治に始まる近代小説は、結婚以前の恋愛過程を描き男女間の考え方の違いを克明に刻むようになる。
やがて、恋愛は大人がするもの、または権力者がするものという価値観を壊し、封建的な家制度を見直すことに繋がっていく。
内海文三は父親亡き後、東京に住む叔父の家に引き取られる。文三は叔父の庇護のもと、
勉学に励み卒業後役所での仕事を手に入れる。ところが、役所から解雇を言い渡されてしまうのだった。
力を持つ上司に懇願すれば復帰も夢ではないのに、文三は自尊心から毛嫌いしているその上司へ頭を下げることは
出来ないと考え、叔母や同僚の本田が上司に頭を下げろという言葉に耳を貸そうとしない。
やがて、叔母は仕事もしないで家にいる文三を煙たがるようになる。
ただ一人文三の味方になってくれるのは叔父夫婦の娘・お勢のみだった。
ところが、お勢との結婚を約束されていた文三だったが、その約束さえ怪しくなっていく。
お勢が本田と一緒に菊人形を見に行く時、文三は菊観を断り一人家で留守番をすることになる。
ところが、文三はお勢が本田と一緒にいることが気になってしょうがない。お勢たちが帰ってきたあと、叔母とお勢が
調子者だが愛想がよく話が面白い本田に一目置くようになる。
特に叔母が本田を評価したのは、本田が文三とは違い上司とうまくやって役所での仕事も順調にいっていることだった。
本田が頻繁に家にやってくるようになると、文三は本田とお勢が楽しく会話している姿を見聞きして嫉妬するようになる。
文三が大人気なくお勢に八つ当たりするようになると、今まで大目に見ていたお勢さえも文三を見捨て頼りがいのある
本田に興味を示すようになるのだった。
お勢に対して見かけの美しさと、親の過保護によって授けられた教育による知識の多さだけに目が行っていた文三だったが、
実際のお勢という女性が自分と思っていた女性とは違っているということに気づいていく。
淡い恋心を捨てきれず、自尊心を抑えながら叔母やお勢の嫌味を言われても我慢していたが、文三は最後の決断を下す。
お勢に告白して本心を尋ね、もし自分のことを嫌いになってしまったのであったら家を出て行く決心をする。
(2006.9.8/A)
二葉亭四迷(1864-1909)
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『今戸心中』(広津柳浪/明治29年7月)
(レビュー未/以下は作品の冒頭)
一
太空(そら)は一片(ぺん)の雲も宿(とど)めないが黒味渡ッて、二十四日の月はまだ上らず、霊あるがごとき星のきらめきは、仰げば身も冽(しま)るほどである。不夜城を誇り顔の電気燈にも、霜枯れ三月(みつき)の淋(さび)しさは免(のが)れず、大門(おおもん)から水道尻(すいどうじり)まで、茶屋の二階に甲走(かんばし)ッた声のさざめきも聞えぬ。
明後日(あさッて)が初酉(はつとり)の十一月八日、今年はやや温暖(あたた)かく小袖(こそで)を三枚(みッつ)重襲(かさね)るほどにもないが、夜が深(ふ)けてはさすがに初冬の寒気(さむさ)が身に浸みる。
少時前(いまのさき)報(う)ッたのは、角海老(かどえび)の大時計の十二時である。京町には素見客(ひやかし)の影も跡を絶ち、角町(すみちょう)には夜を警(いまし)めの鉄棒(かなぼう)の音も聞える。里の市が流して行く笛の音が長く尻を引いて、張店(はりみせ)にもやや雑談(はなし)の途断(とぎ)れる時分となッた。
廊下には上草履(うわぞうり)の音がさびれ、台の物の遺骸(いがい)を今室(へや)の外へ出しているところもある。はるかの三階からは甲走ッた声で、喜助どん喜助どんと床番を呼んでいる。
「うるさいよ。あんまりしつこいじゃアないか。くさくさしッちまうよ」と、じれッたそうに廊下を急歩(いそい)で行くのは、当楼(ここ)の二枚目を張ッている吉里(よしざと)という娼妓(おいらん)である。
「そんなことを言ッてなさッちゃア困りますよ。ちょいとおいでなすッて下さい。花魁(おいらん)、困りますよ」と、吉里の後から追い縋(すが)ッたのはお熊(くま)という新造(しんぞう)。
吉里は二十二三にもなろうか、今が稼(かせ)ぎ盛りの年輩(としごろ)である。美人質(びじんだち)ではないが男好きのする丸顔で、しかもどこかに剣が見える。睨(にら)まれると凄(すご)いような、にッこりされると戦(ふる)いつきたいような、清(すず)しい可愛らしい重縁眼(ふたかわめ)が少し催涙(うるん)で、一の字眉(まゆ)を癪(しゃく)だというあんばいに釣(つ)り上げている。纈(くく)り腮(あご)をわざと突き出したほど上を仰(む)き、左の牙歯(いときりば)が上唇(うわくちびる)を噛(か)んでいるので、高い美しい鼻は高慢らしくも見える。懐手(ふところで)をして肩を揺すッて、昨日(きのう)あたりの島田髷(まげ)をがくりがくりとうなずかせ、今月(この)一日(にち)に更衣(うつりかえ)をしたばかりの裲襠(しかけ)の裾(すそ)に廊下を拭(ぬぐ)わせ、大跨(おおまた)にしかも急いで上草履を引き摺(ず)ッている。
※この作品は「青空文庫」にて読むことができます。→「今戸心中」(広津柳浪)
広津柳浪(1861-1928)
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「金色夜叉」(尾崎紅葉/明治30年)
両親が亡くなった後、父親が世話した縁で鴫沢家に居候する間寛一は娘の宮と結婚を約束されていた。
ところが、宮に富山銀行の跡取りとの見合いの話が舞い込んでくる。
宮の両親は自分たちの将来を考えて、宮と富山銀行の息子との見合いを承諾するのだった。
両親は間寛一に対して、宮が銀行家一族の中に入ることで皆が幸せになるのだからと宮との結婚を諦めさせ、
宮の結婚後にはお前にも留学をさせてあげるという約束をする。
宮以外を自分の妻として考えられない間寛一は学校を辞めて、鴫沢家を出て行くのだった。
裸一貫で飛び出た間寛一が身を寄せた先は高利貸しを営む鰐淵の家だった。
間寛一は宮とその両親たちに裏切られた腹いせと人間不信から、債務者に対して非人間的な取立てをするようになり、
やがて学生時代の友人に対しても同様の取立てをして非難されるようになる。
そんな生活を送っていたことから、ある日、間寛一は債務者と思われる数人の暴漢に襲われ大怪我を負うのだった。
さらに、何者かによって鰐淵邸が放火され鰐淵夫妻が死亡する。
体に障害を負いながらも、鰐淵の遺産を相続して高利貸しをしていたところ、
間寛一のことを想って結婚生活がうまくいっていなかった宮が神経症者のような面立ちで
間寛一のもとに現れるのだった。
過去に許されざる仕打ちをした相手に対して、完全に拒絶する間寛一だったが、
死をもってつぐなうからと許してくれと宮が小刀で自刃し血の大滴を垂らしている姿を見て
さすがの間寛一も許さざるをえなくなるのだった。
その後、宮は湖に向って歩いていき、間寛一もその後を追っていく。
間寛一が湖にたどり着くと、溺死体となった宮を発見するのだった。
その姿を見た間寛一は宮を背負い、入水自殺をして、そして死んだと思いきや
目覚めると、間寛一は夢を見ていたことを知る。
夢落ち。それはないでしょ尾崎さん。
と、思いきや続々編、新続編と話が続いていく。
朝日新聞の朝刊小説として大人気を博した『金色夜叉』。
後半部分は、会社の意向で連載を強引に続けたことが露骨に分かるストーリーは無理がありすぎる設定。
小説黎明期に出版された作品なので、小説ならではのディテールを凝るというよりは、
いかに一般大衆の気をひくような文を書くかということに特に重きを置いている感じがする。
まるで活劇を観ているかのような展開と、会話のやり取りが行われている。
(2006.9.8/A)
尾崎紅葉(1867-1903)
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『高野聖』(泉鏡花/明治33年2月)
(レビュー未/以下は作品の冒頭)
第一
「参謀本部編纂の地図を又繰開(くりひら)いて見るでもなからう、と思つたけれども、余りの道ぢやから、手を触るさへ暑くるしい、旅の法衣(ころも)の袖をかゝげて、表紙を附けた折本(をりほん)になつてるのを引張り出した。
飛騨から信州へ越える深山(しんざん)の間道(かんだう)で、丁度(ちやうど)立休(たちやす)らはうといふ一本の樹立も無い、右も左も山ばかりぢや、手を伸ばすと達(とゞ)きさうな峯(みね)があると、其(そ)の峯へ峯が乗り巓(いたゞき)が被(かぶ)さつて、飛ぶ鳥も見えず、雲の形も見えぬ。
道と空との間に唯(たゞ)一人我(わし)ばかり、凡(およ)そ正午と覚しい極熱(ごくねつ)の太陽の色も白いほどに冴え返つた光線を、深々と頂いた一重の檜笠(ひのきがさ)に凌(しの)いで、恁(か)う図面を見た。」
旅僧(たびそう)は然(さ)ういつて、握拳(にぎりこぶし)を両方枕に乗せ、其(それ)で額を支へながら俯向(うつむ)いた。
道連(みちづれ)になつた上人(しやうにん)は、名古屋から此(こ)の越前敦賀の旅籠屋(はたごや)に来て、今しがた枕に就いた時まで、私が知つてる限り余り仰向けになつたことのない、詰(つま)り傲然(がうぜん)として物を見ない質(たち)の人物である。
一体東海道掛川(かけがは)の宿(しゆく)から同じ汽車に乗り組んだと覚えて居る、腰掛の隅に頭(かうべ)を垂れて、死灰(しくわい)の如く控へたから別段目にも留まらなかつた。
尾張(をはり)の停車場(ステーシヨン)で他(た)の乗組員は言合(いひあ)はせたやうに、不残(のこらず)下りたので、函(はこ)の中には唯(たゞ)上人(しやうにん)と私と二人になつた。
此(こ)の汽車は新橋を昨夜九時半に発(た)つて、今夕(こんせき)敦賀に入らうといふ、名古屋では正午(ひる)だつたから、飯に一折(ひとをり)の鮨(すし)を買つた。旅僧(たびそう)も私と同(おなじ)く其(そ)の鮨を求めたのであるが、蓋を開けると、ばら/\と海苔(のり)が懸(かゝ)つた、五目飯(ちらし)の下等(かとう)なので。
(やあ、人参(にんじん)と干瓢(かんぺう)ばかりだ、)と踈匆(そゝ)ツかしく絶叫した、私の顔を見て旅僧(たびそう)は耐(こら)へ兼ねたものと見える、吃々(くつ/\)と笑ひ出した、固(もと)より二人ばかりなり、知己(ちかづき)にはそれから成つたのだが、聞けば之(これ)から越前(ゑちぜん)へ行つて、派は違ふが永平寺(えいへいじ)に訪ねるものがある、但(たゞ)し敦賀(つるが)に一泊とのこと。
若狭(わかさ)へ帰省する私もおなじ処(ところ)で泊(とま)らねばならないのであるから、其処(そこ)で同行の約束が出来た。
※この作品は「青空文庫」にて読むことができます。→「高野聖」(泉鏡花)
泉鏡花(1873-1939)
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「金貨」(森鴎外/明治42年)
左官屋の八はぼろ着を纏い、千駄ヶ谷の停車場の改札の前で何をするともなく突っ立っていた。
改札から三人連の軍人が出てくる。一番先頭を歩く軍人は襟章からして大佐か中佐と思われた。
八は無意識に三人連の後をつけるようにして歩いていくのだった。
三人連は冠木門の邸宅に入っていく。
先頭を歩く一番偉そうな人物がこの邸宅の主人だった。
八は庭の竹林に忍び込んで様子を伺っていると、三人連はビールを飲みながら碁を始める。
雨が降ってきて八の着ている半纏はかなり濡れていたが、八は意に介さなかった。
しばらくすると、八は尿意を催したので仕方なく椿の木の下に隠れてひっそりするのだった。
三人連はとうとうビールを飲み干し、次には主人がコニャックを取り出してお湯割にして飲みだす。
やがて、碁の勝負も終わり寝静まる。
寝入ったのを見計らって、八は三人連れが碁をしていた部屋に忍び込む。
八はあまりにも咽喉が渇いていたため、ビールの瓶を傾けるが中には一滴も残っていない。
ところが、コニャックはまだかなり残っていた。
八はコニャックを割らないでぐっと飲む。
アルコール度が高く咽喉がやけるような気がしたがその味わいに幻惑し、
八はコニャックの瓶を何度も傾ける。
そして、いつしか八は夢の中に入り込んでいくのだった。
(2006.8.12/A)
森鴎外(1862-1922)
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「青年」(森鴎外/明治43年)
小説家を目指して上京した文学青年の小泉純一は、文士を尋ねて文学との関わり方を探るなか、
裕福で恵まれた家庭に育った自分には行動力や小説の題材となる経験がないと意識するようになる。
有楽座にイプセンの演劇を観に行き、そこで坂井未亡人と知り合う。未亡人は夫と同郷の小泉に対して親近感を示し
また夫が学者だったこともあり家には沢山の書物を所蔵しているので、小泉に書物を貸そうと申し出る。
小泉は坂井未亡人宅を訪問しラシーヌの本を借りた時、夫人から箱根へ行くので遊びに来ないかと誘われるのだった。
小泉は色々な集まりに参加するが、自分と他人との距離感に寂しさを募らせ、坂井未亡人が滞在している箱根に向うことを決心する。
ところが、箱根に到着すると宿は見つからないので仕方なく警察官に紹介してもらった宿は不潔で寝そべると服が
汚れてしまうような所だったりと、ついてないなと思っていたところ、小泉は坂井未亡人が頑強な体格の男と二人で
歩いている所に遭遇する。
坂井未亡人は気兼ねする小泉に対して躊躇することなく声をかけた。
坂井未亡人と一緒にいる40代らしき男は小泉も名前を知っている有名な画家であった。
小泉は嫉妬に駆られながらも、男と未亡人の関係を疑りながらも僅かな淡い望みを抱いて坂井未亡人の泊まる宿を伺う。
しかし、小泉がそこで知ったのは本人の願望とは裏腹に、二人の親密な関係をまざまざと見せ付けられるばかりだった。
結局、小泉は箱根を去っていく。
主人公の独白というスタイルで書かれていて、主人公の行動原理はいかにも文学青年が思いつきそうな
小説を書くことに直接関係するようなものーいわゆる西洋哲学だったり欧州文学などの話題を見たり聞くことのみ。
恋愛や友情に到るかもしれない人間関係には極力深入りしないように心がけている。
とにかく主人公は他人と一定の距離を保ちあくまで観察者としての立場を貫くのだ。
その結果、この小説で描かれている登場人物や場所、会話などこの小説に描かれている全ての事象と
主人公の意識との間に大きな距離感が生じてしまっている 。
ただ同じようなやりとりが永遠と繰り返されていて気がしてならない。
(2006.8.28/A)
森鴎外(1862-1922)
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「濁った頭」(志賀直哉/明治44年)
“(自分はいつも余り物を云わない津田君の今晩の調子に驚かされた。そして二年間も癲狂院で絶えず襲われていたと云うこの人の恐ろしい夢を……然し津田君は単刀直入に聞いてくれと云って語り出した。)”
物語はそんな一節から始まる。いわば津田という男の半生の告白だ。
小説家になろうと思っていた少年時代。そして17歳からキリスト教徒として生きた7年間。
母方の親類で遊びかたがた彼の家に手伝いにやってきていた、彼より4つ年上でお夏という名の女性との恋…。
彼は青春時代をどう生き、何が彼を癲狂院に向かわせたのか。絶え間なく葛藤を繰り返す彼の苦悩の日々が描かれる。
志賀直哉の作品では、父への反抗心がテーマとなることがしばしばあるが、この作品でもその一面が垣間見られる。
この作品を読んでいると、何故かふと夢野久作の作品を連想してしまった。
(2006.5.6/菅井ジエラ)
※本誌内企画“志賀直哉を読む”より再掲。
志賀直哉(1883-1971)
詳細は本誌内企画“志賀直哉を読む”ページをご覧ください。
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「樹蔭」(松本泰/明治44年)
(レビュー未)
『天鵞絨』(籾山書店/大正2年)所収
「築地の家」「樹蔭」「U君の話」「W倶楽部」「ウヰンタア」「温室より」「玩具(おもちや)」「けいちやん会議」「P君の批評」「一週間の夢」「墓まゐり」「暗き家」
松本泰(1887-1939)
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「哀花熱花」(兒玉傅八/明治45年5月)
(レビュー未)
『哀花熱花』(春陽堂・現代文芸叢書:第11編/明治45年5月)所収
「芸人の悲哀」「泥船」「久世山の夏草」「二階の下」「絶望」「東京の女と柳」「美人像」「鳶」「苗売」「夏の隅田川」「網納屋」「舟中の少年」「顔」「橋」「汚れ身」「情熱」「風濤の別れ」「闇黒」「幻影」「秋風語」「鶏」「蝉の音楽」「女優」「煙草入」「南国の女」「鰯雲」「女乞食」「図書館の日」「卓の前」「犬」「鷺」「雷鳴の夜」「鎌倉の半日」「病院前」「九十九湾の一夜」
児玉(兒玉)花外(傅八)(1874-1943)
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「彼岸過迄」(夏目漱石/明治45年)
大学を卒業した後に職につかずフラフラとしている敬太郎は、同じ宿に下宿する森本という男と酒を飲み交わす。
森本という男は酒を飲んで酔ってくると、年上なことをいいことに兄貴然と自分の武勇伝などを絡めて
人生論を垂れるのだった。森本は偉そうな事を言っておきながら、仕舞いには自分には学歴がないからと不貞腐れるような男だったので
尊敬には値しなかったが、人生経験の乏しい敬太郎は自分の経験のなさを実感することになる。
ところが、数日後に森本は突然夜逃げするような形で下宿先からいなくなってしまう。大家は森本が半月近く家賃を
払っていなかったので相当頭にきている。それから、しばらくして敬太郎のもとに森本からの手紙が届くのだった。
森本はどうやら大陸に渡ったらしく、上海で仕事にありついたと書き記してある。そして、玄関脇に置いたままになっている
洋杖を敬太郎に譲るということが記されていた。森本がいなくなった後、下宿先の玄関脇に置きざりにされていた。
洋杖の先には蛇の彫刻が彫られている。森本自らが彫ったものだったが悪くはない仕立てであった。
敬太郎は友人の家柄の良い須永に仕事を斡旋してもらいにいくと、叔父の田口という男を紹介される。
田口に会いに行く前に、敬太郎は文銭占いをするお婆さんに占ってもらうのだが、
その占い師のおばあさんは敬太郎の未来をこう予言する。
「貴方は自分のような又は他人のような、長いような又は短い様な、出るような又は入るようなものを持って
いらっしゃるから、今度事件が起こったらそれを忘れないようにしなさい。そうすればうまく行きます。」
敬太郎はこの怪しい占いを信じてみることに決め、占い師の言う長いようで短いようなものとは
森本が置いていった洋杖のことだと一人合点し、どこへ行くにも必ず洋杖を持ち歩くのだった。
敬太郎は須永の叔父の田口に、また別の叔父の松本を探偵することを命じられたりするなど
須永の親類と親交を深めていき、やがて友人須永の信じがたい過去を知ることになる。
それは、森本の酩酊しながらの自慢話とは違い、人生の真実に触れるような告白だった。
(2006.8.28/A)
夏目漱石(1867-1916)
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